ブログ「芋の気ままな生活」の管理者、芋が小説を置くためのブログです。コメントいただければ幸いです…。


by old-imo

カテゴリ:短編集( 2 )

メルト -想い-

朝目が覚めるといつも真っ先にあなたのことを思ってしまう。
「何で?」
君はニヤニヤしながら尋ねる。
「いや…なんでって…」
この日はこんな他愛もない会話をして君と別れた。その後思い切って前髪を切ろうと思っていた。君に「どうしたの?その髪型。」って聞かれたくて…

-----翌日。

この日は君とデートする日。ピンクのスカートをはいて、花がついている髪飾りをして出かける。
私は心の中で思っていた。

今日の私はかわいいのよっ!

「昨日、朝目が覚めたら真っ先に君の事を思っちゃうって言ってたよね?」
私は言った。
「ん?…う、うん。それがどうかしたの?」
…やっぱり言えない…「好きだから」だなんて…。
「顔真っ赤だよ」
君は笑いながら言った。そんなときも目をあわせられずにいた。
君のことが好きだから…。

昨日の天気予報が嘘をついた。今日は土砂降りだ。
君は店の中で私を待っていた。私はカバンの中にいれっぱなしにしてあった折り畳み傘をカバンに仕舞う。
「今日土砂降りだな」
君は少しぬれた髪をいじりながら不機嫌そうに言った。
「うん。これだけ降ってたら今日は遊園地無理かな…」
「…よしわかった。そこまで言うなら行こう!」
…そこまでも言ってはいないけど行きたかったのは事実だった。
いつもの店を出ると君は傘を持ってくるのを忘れたと呟いた。
「あー、どうしよ。家に忘れてきちゃった。ここ来るときは晴れてたのになぁ。」
君はさらに不機嫌そうになる。
「…じゃあ私の傘入れてあげるよ。」
この一言を言うのも結構勇気がいることだった。
「えー…」
この言葉を聞いて私は少し緊張した。だが君はすぐに
「しょうがないから入ってやるよ」
と、笑いながら言った。
「しょうがないって何よ!じゃあもう入れてあげないもんねー!」
と私が言うと君は
「あー嘘嘘!入れて入れて!」
なんていうのだった。

そのとき、何が起こったのかわからなかったがとりあえず一つだけ分かったことがある。
恋に落ちる音がしたのだった。
あいあい傘をしながら遊園地まで向かう。その間私は息が詰まりそうだった。傘を一緒に持ってるときに君に触れている右手がブルブルと震えている。緊張していた。胸もかなり高鳴っていた。私はそこで気づいたのだった。
君を捕まえるまでにはもう手を伸ばせば届く距離まできている。
「どうしよう…」
つい声に出してしまった。
「え?」
雨の音で聞こえなかったみたいで運が良かった。

遊園地で散々遊び-----と言っても雨の中でいろんなものを見たり室内アトラクションに入ったりだが-----最後に観覧車に乗った。二人だけの空間なので、ここでプロポーズするカップルも少なくない。
私は君が好きなことを態度に表していた。隣の席でベッタリとしたりとか、ボディタッチしてみたりとか。そこで私は思っていた。
「この想い、君に届いてるかな…?」
それと一緒に時間を止めて欲しかった。なんだかわからないけど泣きそうだ。でも逆に嬉しすぎて死んでしまいそうでもあった。

…それは言いすぎか。

そして君は沈黙の中で口を開いた。
「あのさ…」
「何?」
「実は…俺外国に留学することになったんだ…。」
私は絶句した。そんなこと急に言われても…
「ごめん!今まで内緒にしてて。本当は少し前から決まってたことなんだ。」
私は口を開いたまんま硬直する。よほど馬鹿らしい顔をしていただろう。
「実は…明日出発するんだ。」
二人だけの空間は一気に深い海底のように静かな暗い雰囲気になった。

観覧車を降りて、家に帰るときが来た。君と私の家は完全に反対だから駅で別れることになる。
もう少しで駅についてしまう。今別れるともう君には会えない。明日からは君はもういない…。
近くて遠いこの距離。どうにかして縮めたかった。そして思いついたのが「告白」だった。
そして私はこういった。
「ねぇ、手、つないでもいい?」
「いいよ。」
傘を持ちながら手をつなぐ。このときはもう緊張はしていなかった。
駅につくと君は「それじゃあ」と言った。私は心の中でもうバイバイしなくちゃいけないのか…と思っていた。
そして私はこういった。
「ねぇ、今すぐ抱きしめて。」
「え?」
「…なんてねっ」
「ははは…」
そのうち、君が乗る電車が駅のホームに到着し、君は電車に乗り込んだ。
「またいつか、帰ってきたときは…そのときは…」
君は言葉をそこで切り、私は小さく頷いた。
最後に君は優しく微笑むと、電車のドアが閉まった。
君が乗った電車はもう見えなくなり、私はしばらくその場に佇んでいた。
雨はすっかり晴れており、沈みかけの夕陽が街並みを赤く染める。
そんな中で私はこんなことを思っていた。


-----遠まわしな私の告白、君に届いたかな…?
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by old-imo | 2010-07-24 22:58 | 短編集

レオンの一日

レオンの一日

俺は某エージェント事務所に勤めている、それなりに、いや結構優秀なエージェントだ。ミッションの収入もそれなりな額だ。俺は今日もその事務所に勤めている。

事務所に着くと、同僚のクリスが先に来ていて「よう。」などと挨拶を交わした。
俺は席に座ると、まずパソコンを起動した。コレには大事なデータが入っている。俺の今までの実績も、アシュリーのパンt…いや、なんでもない。
俺はミッションの依頼が来るまでクリスと雑談などをしながらブラックコーヒーを飲んでいると、事務所の所長のマーシーが入ってきた。
「おはよう、マーシー。」
「ああ、おはよう。」
そんな淡々な会話を交わした後、マーシーはパソコンを立ち上げ、特に意味も無くネットサーフィンをし始めた。まぁそれが俺の事務所の日常なのだが、その日常を覆す'厄介者'が現れた。

ある男が事務所のドアをコンコンとノックするとしばらく間をおいてから躊躇無く入ってきた。
男は俺たちと目が合うと、ソファの前に立って一礼してから、「座ってもいいでしょうか?」とたずねてきた。
「あ…はい、どうぞ。」
とマーシーが返すと、男は持っていたカバンをソファの下においてから、おずおずと座った。
おずおずとしたり躊躇無く行動したり訳のわからない男だ。
男はマーシーをその傍に立っている俺たちを一度見渡してから、用件を話し始めた。
聞くところ人探しの依頼らしい。男は用件を話し終わった後、ハッとなったようにカバンを漁り始め、中から名刺ケースを取り出して名刺を俺たちに渡した。名前はブラウンと言うらしい。なかなかな名前だ。
ブラウンは探してほしい人の名前を言うとすごすごと帰っていった。
その人の名前は「レオン・S・ケネディ」と言うそうだ…。って俺じゃねぇか!
ブラウンの話を聞いている最中ブラウン全員が俺のほうを向いた。そのときに言うべきなのかみなとまどっていたのだろう。
「ど…どうしよう…」
マーシーが言った。いや、俺だってどうしたらいいかわからないさ。もしかしたら相手の目的が俺を殺すことだったりするんだし、どうしたものか…。
しばらくの沈黙が流れた後、クリスが携帯を取り出してブラウンの名刺をマーシーからひったくった。
何をするのかと見ているといきなりブラウンに電話し始めた。まあ予想はできていたが何をするつもりだ。
俺が止めようとした瞬間クリスは鋭い目で俺を見た。…クソッ、こいつと戦ったら絶対殺されるな…。
仕方なく見ているだけにしているとクリスがしゃべり始めた。
「あ、ブラウンさんですか?はい、エージェント事務所のクリスと申します。あ、はい、そうです、マーシーの左にいた男です。本題ですが、レオンという男が見つかりまして、…はい、本当です。今すぐ事務所に来て下さい。はい、わかりました。それでは。」
ピッ。
クリスが携帯を切った。いったい何しやがるこの男。俺がクリスをまじまじと見つめていると
「まぁなんとかなるんじゃないの?お前エージェントだろ。自分でなんとかしろよ。」
などとまるで他人事のようにマーシーが言い出した。なんで他人事なんだよ、じゃあお前が行けよ。
「やだね。これはお前の問題だ。」
誰がお前の問題だ。…畜生、運が悪いなぁ俺って。
するとドアを開けてブラウンが入ってきた。
「レオンがいるって本当ですか!?」
かなり興奮しているようだ。あまりの気迫に少し引いてしまった。
「は…はい。実は…この男こそがレオンです。」
「えぇッ!?」
まさに世紀の瞬間が訪れたときのようなリアクションをしやがる野郎だ。どう考えても大きいだろ。
「ちょ…ちょっといいですか…。」
「は…はい…。」
俺はブラウンのところへ行くとヒソヒソ声でしゃべり始めた。
「俺だよ、俺。アレックス。」
「えっ!!??」

それこそが世紀の瞬間だったのかも知れない。

END
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by old-imo | 2009-03-22 17:55 | 短編集